vol.06 京都中央信用金庫 様
地域やお客様だけでなく従業員の健康にも寄り添う「On Your Side」
預金量5兆円を超える業界No.1の信用金庫『京都中央信用金庫』様は、『人財』を重視する人的資本経営に力を注がれています。この柱の1つとなるのが職員の健康で、健診の取り組みを見れば定期健康診断受診率100%、特定保健指導実施率99%というスコアに驚かされます。特定健診・特定保健指導実施率の総合順位では独自の健康保険組合を持つ組織において全国一とのことです。今回は、その推進力となる考え方や具体的な取り組みについて業務役の末藤裕美様(人事総務部人事厚生グループ担当)にお話しをお聞きしました。インタビュアーは武田病院健診センター営業部の藤岡課長代理です。
健診・特定保健指導の先延ばしを防ぐ環境を構築
藤岡 従業員(職員)数が2000名を超える法人様で、『特定保健指導の実施率が99%』というスコアは本当にすごいですね。独自の健保組合を持つ法人様のなかで全国一とも伺っています。
末藤 お蔭様で定期健康診断の受診率は100%を継続しています。特定保健指導については、実は2019年度までは50%前後だったのですが、様々な取り組みにより2022年以降、ほぼ100%となっています。
藤岡 驚かされる内容です。具体的にどのようなことをされてきたのでしょうか。
末藤 色々あるのですが、直接的な取り組みの一つは特定保健指導や人間ドック等を就業時間中に受診できるようにしたこと、そして健康管理推進室が中心となって対象者にしっかりとアプローチを続けることです。
藤岡 いわば「逃げ道」を無くしていったということですね(笑)。
末藤 そうですね(笑)。職員自身が特定保健指導を予約するスタイルでは、色々な理由で先送りになることが予見されます。そこで未受診者を本店ビルに集めて特定保健指導を行うようにしました。
藤岡 なるほど、集団指導もされているのですね。
末藤 一部ですが行っています。特定保健指導の主体は健保組合ですが、業務命令としてKPI(重要評価指標)を100%に定め、強く推し進めています。
藤岡 多くの拠点があるので、健診等の業務推進は本当に大変な業務だと思います。当センターでは、巡回や来所での定期健診のほか、人間ドック、特定健診、乳がん健診、雇用時健診を受託させていただいています。健診バスによる巡回健診は、近い店舗の職員様を一つの拠点で行うなど、効率的な運用を検討いただき大変助かっております。
末藤 2024年12月現在で店舗数は京都市内を中心に京都府、滋賀県、大阪府、奈良県など店舗数が135店。定期健康診断の管理総数は2700人規模となっています。武田病院健診センターさんには、京都市域を中心としたエリアでおよそ1400名の巡回健診をお願いしています。また、巡回時にフォローできなかった職員や、再検査、人間ドック等は京都駅前の貴施設で対応いただいています。
藤岡 4府県で135店ものマネジメントには頭が下がります。
末藤 とは言え、どうしても巡回健診以外の対応が必要なケースも出てきて、管理に苦労することがあります。しかし、そうした時も武田病院健診センターさんに連絡すれば来所健診で対応していただけるので、安心できます。
藤岡 当方でも巡回健診に加えて、さまざまなフォローできるよう努力をしていきます。
健康経営プロジェクトチームを起ち上げ現場の声を反映
藤岡 定期健康診断の受診は重要ですが、いわばスタートラインであって、そこからご自身の健康に対してどのように努力を続けていくことが大切と感じます。
末藤 そうなのです。一人ひとりが高い健康意識を持つことが重要です。そのための取り組みも従前から行ってきたのですが、これを経営目線で進めていこうと2022年に「健康経営宣言」を行いました。そして「健康づくりの取り組み」「メンタルヘルス対策の取り組み」「働き甲斐のある職場作り」の3つを重点項目に掲げて推進しています。
藤岡 本当に多彩なアプローチをされているのですね。浸透のためのセミナーも多様にあると伺っています。
末藤 そうですね。例えば「男性の育児参加のセミナー」「仕事と介護の両立セミナー」「メンタルヘルスセミナー」など、動画視聴形式で行っています。
藤岡 動画視聴だと、どの店舗からでも手軽に視聴できますね。実際、参加率はどれぐらいなのでしょう?
末藤 テーマの注目度などで上下しますが、この3セミナーの参加率は94~95%でした。
藤岡 参加率も凄いですね! ところで女性職員が多いと思うのですが、女性向けのセミナーも開催されているのですね。
末藤 まさに「女性のための健康セミナー」を行っています。実はこうした、女性のためのリテラシー向上の機会が必要だと声をあげたのは、現場の女性職員でした。
藤岡 下からの意見が通る組織風土なのですね。
末藤 現場で求められているものかを計ることが大事だと思っています。健康経営宣言を行った際、店舗の若手職員を加えた「健康経営プロジェクトチーム」が起ち上がりました。そこで「生理休暇をもっと取りやすく」とか「女性特有の病気について学ぶ機会を」といった意見が出されたのです。
藤岡 それを受けて様々な企画を進めておられるのですね。
末藤 先ほどお話のあった就労時間中に人間ドックや精密検査に行く取り組みも、このプロジェクトチームでの話し合いのなかから生まれたものなのです。
藤岡 現場の声に耳を傾け、一つひとつということですね。貴庫の経営理念「On Your Side」は、地域やお客さまと向かい合うのではなく傍らに寄り添いともに肩を並べ、同じ夢、同じ目標に向かって歩んでいく。という想いが込められているとお聞きしましたが、職員の皆様にも同じように寄り添っておられるのですね。
未病のうちに支援する仕組みを促進
藤岡 ところでこうした健康経営を進めるにあたり、末藤様はじめ皆様は、どのような事を重視して取り組まれておられますか?
末藤 職員の健康管理を担当している中で、誰かが病気になって長期休暇をとるようなケースが発生するたび、『そこまでの状態になる前に何か出来ていれば』という気持ちになります。やはり心身とも未病のうちの対応が重要ですので、その手前の取り組みを充実させていきたいです。これまでの取り組みで就労環境も改善され、職員の健康意識も高まってきています。これをさらに良いものにしていければという気持ちです。
藤岡 まさに私たちが提供する「予防」とリンクするお考えと思います。元気だからこそ好きなことも出来るし、仕事への遣り甲斐も感じられる、ということですね。そこではフィジカルだけでなくメンタルについても未病がポイントとなりそうです。
末藤 そうなのです。とくにメンタル面が目下の課題で、「相談する仕組み」の敷居をもっと低くできないか、検討を進めているところです。
藤岡 私たちも、臨床心理士さん、公認心理士さんと提携し、何かお助けできる仕組みが出来ないか、まさに模索しているところです。
末藤 その折は、ぜひ力になって欲しいです。
藤岡 京都中央信用金庫様は規模が大きいですので、調整が必要かと思いますが、そうした部分も含めて一緒に取り組んでいければと思います。
末藤 まず本店ビルから試行などでもよいかなと思います。このように、「こういうことできる?」と、必要なときにすぐ相談できる関係性であることの方が助かっています。
藤岡 そう言っていただけて嬉しいです。私たちも「On Your Side」を見倣わないといけないですね。
「人的資本経営」の高度化をめざす
藤岡 他にも色々と取り組みがあると伺っています。
末藤 後はITツールの活用ですね。健保組合とタイアップし、専用アプリでウォーキングイベントを行っています。今回は3人1組のチーム戦で歩数を競っています。毎日、ランキングが出るのですよ。
藤岡 インセンティブとなって楽しめそうです。
末藤 部内外で声をかけてチームを組むなど、コミュニケーションツールとしても活躍しています。
藤岡 素晴らしい取り組みですね。ところでアプリと言えば、当センターが提供の健診結果が分かる「NOBORI」を人間ドック受診時に50%以上の方にご導入いただいております。巡回健診でも今年から導入いただきましたが現場の反応はいかがでしょうか?
末藤 私も体験しましたが便利だと感じました。診察時や人間ドックなど、これまでの結果がすぐ確認できるので重宝するとの声も集まっています。またマネジメント面からすると、直接配布しないといけない紙ベースより、アプリから確認できる電子ベースの方が良いと感じます。
藤岡 喜んでいただけて何よりです。
末藤 このほか「健康経営プロジェクトチーム」発案の独自の試みとしては、今まさに聴こえてくるオフィスミュージックがその一つです。本店ビル内でクラシックピアノなど短時間の音楽を繰り返し流し、職員を癒しています。オフィスの雰囲気を和らげ、職員のモチベーションアップを図っています。
藤岡 お客さまが入るフロアや駐車場にも流れていますよね。本店ビル全体で流れているのですか?
末藤 はい。今では仕事中にBGMがあるのが当たり前という状況になりました。気持ちもとても明るくなり仕事も捗る気がします。
藤岡 本当に多くの取り組みを進めておられるのですね。お聞きしたお話しのいずれにも共通しているのは「人を大切にする組織」ということです。これを組織的に上手く行われている印象です。
末藤 まさにそうですね。我々は、「人財」こそもっとも重要な資本と位置付けています。健康はもちろん、職員の主体的・能動的な成長を促し、自らの能力を高め、高い付加価値を生み出すことができる組織の実現に向け、「人的資本経営の高度化」を図っているところです。これからもご協力をお願いできれば、と思います。
藤岡 良いお話を伺えました。本日はありがとうございました。
京都中央信用金庫
■本社
京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町91番地
■店舗数
135店
(京都府、滋賀県、大阪府、奈良県)
■従業員数
2,376人(男性1,378人、女性998人)
■健康保険組合
京都中央信用金庫健康保険組合
http://kyotochushin-kenpo.or.jp
■グループ会社
中信ビジネスサービス株式会社
中信総合サービス株式会社
中信ローン保証株式会社
中信リース&カード株式会社
中信コンピューターアンドコミュニケーション株式会社
京都アンプリチュード株式会社
中信ベンチャーキャピタル株式会社
■事業内容
1940年に京都市中央市場信用組合として設立されました。1951年に改組し京都中央信用金庫となります。事業は資金繰り支援にとどまらず、経営改善や事業再生支援など幅広く展開。地域のリーディングカンパニーとして、サステナブルな社会の実現に努力しています。