vol.03 タキイ種苗株式会社 様
健診はただの記録行為でなく企業成長のための基盤づくり
健康意識の高まりは年々、大きなものになっています。日本対がん協会による5大がん検診受診者数の推移をみると、コロナ期に一度落ち込んだものの回復傾向にあり、2021年度はのべ976万人が受診、その約0.1%にがんが発見されています。こうしたなかタキイ種苗では、巡回バスによる企業健診に加え、「がん」や「脳の病変」「女性特有の病気」などに幅広く対応したオプション検査の受診を積極的に推進しています。今回は武田病院健診センター営業部の藤岡課長代理が、京都市下京区のタキイ種苗本社にお邪魔し総務部人事課の中田 永子様(課長)、松本 加奈子様(健診ご担当)から、お話を伺いました。
こまめな連携で約500名の健診をサポート
藤岡 タキイ種苗様と言えば、「桃太郎トマト」でその名を広く知られる世界的な種苗メーカーですね。
中田 ありがとうございます。もともとは優良な種苗の研究・開発に力を注ぐ瀧井治三郎が1835年に京都で事業をはじめたのが始まりです。京野菜のタネ屋として明治年間には全国に商いを拡大し、大正年間には海外進出も果たすようになりました。
藤岡 日本で最初のカタログ通販をされたとも伺っています。
中田 1905年に石版で国内初の種苗の通信販売をはじめたのも特徴の一つです。性質の異なる2種類の原種を掛け合わせた一代交配種(F1品種)を開発・販売する企業として事業を拡大し、現在では、野菜1500品種、花500品種の開発実績があります。
藤岡 通販に120年もの歴史があることに驚きます。研究開発というと凄くお堅いイメージがともなうものですが、タキイ種苗の皆さんは、とても『アットホーム』な雰囲気ですのでとても意外に感じます。
中田 『アットホーム』とはよく言われますね。農家さんと同様、大自然を相手にしているからでしょうか。一生懸命大切に育てていても、台風などの天災でダメになってしまうこともままあり、それでも受け入れなくてはならないこともあります。こうした自然の摂理を受け入れているからなのかも知れません。
藤岡 人の力ではどうにもならない現象と向き合ってお仕事をされているから、ということなのですね。とても腑に落ちました。社員構成は、そうした種苗を育てておられる研究職の方が多いのでしょうか?
中田 研究・開発に携わる者は約200名で研究農場を中心に業務を行っています。国内の研究農場は、本部である滋賀をはじめ北海道・茨城・長野・熊本にあります。本社は販売部門や品質管理部門、物流部門の社員が多くを占めています。あとは総務・経理・情報システム・法務など管理部門で構成されています。
藤岡 営業職と言うと、社内にあまりおられず飛び回られているイメージですね。
松本 実際、そうですね(笑) 出張で健診を受けられないケースも多々あり、そこは武田病院健診センターさんから受診状況のリストをいただいて、未受診者には「頑張って受けてください」とアプローチを繰り返しています。
藤岡 やはりこまめな連携が大事ということですね。タキイ種苗様はおよそ500名の方が当センターで受診されています。それだけの社員様に健診を周知し日程調整を行うのは大変なお手間と思います。
松本 武田病院健診センターさんには、都度、情報交換をしていただけているので、非常に助かっています。
オプション検査の受診促進で早期発見・早期治療へ
藤岡 ところで例年は巡回バスによる健診でしたが、今年からは施設健診も行うようになりました。結果、全体の3割近くの方が、健診センターの方に来ていただいています。
松本 近年、定期健診でがんが見つかるケースが幾つもあり、それなら健診時にオプション検査を加えることで、早期発見の機会を増やした方が良いという判断になったのです。
藤岡 巡回バスによる健診では、どうしてもオプション項目は腫瘍マーカーやピロリ菌抗体検査・ペプシノゲン検査など血液検査に限られてしまいます。これに対し施設健診では、マルチスライスCTによる肺ドックやMRIによる脳ドックなど様々な検査に対応できます。
松本 私自身、大腸CT検査に興味があり、今回さっそく受診しました。
藤岡 会社の健診メニューとして手軽に受診できるのは、社員さんにとってありがたいですよね。
松本 本当にそうです。とても手軽で助かります。
中田 「会社の健診」ですから就業時間として対応しています。本社の近隣にあることもあり、様々なオプションメニューを選べる武田病院健診センターさんにお願いするのは大きなメリットがあると感じています。
松本 オプションのメニュー表も工夫されていて「血圧が高い」「動悸や息切れを感じる」など症状や悩みに応じてオプションを選べるので検査についての知識がなくても申し込みがしやすいと感じました。
藤岡 施設健診の受診者様からは「とても良かった」との声をいただけているそうで、良かったです。
中田 巡回バスでの健診も、これまで通り会社に居ながら受診できるので、多忙な職員にとってありがたいと感じています。受診場所が分散することで、巡回バスに並ぶ行列も目に見えて短くなりました。
松本 オプション検査を受けた社員からは「興味本位で受けた」という意見もありました(笑)。やはり、気にはなっていたとしても、会社の健診でもなければなかなか受けない、という社員が多いのだと思います。
藤岡 それで早期発見・早期治療につながるのでしたらとても良いことですし、結果、何もなくてもご自身の健康に気を付ける良い機会にもなるのではないかと思います。
中田 私の場合、その時ばかりは同期と一緒に予約をして、健診を受けながらコミュニケーションをとる楽しみになっています。普段は部門が違うのでなかなか顔を会わすことがないので。
藤岡 そうした貴重な機会としてご活用いただいているのですね。
中田 そうです。ちょっとデスクを離れて年に1回、お話をしながら健診を受けるという(笑)
藤岡 そうしたニーズに対応できるよう、ラグジュアリー感を増せるよう検査着をお洒落なものにリニューアルするなど、環境づくりにも力を注いでいるところです。
中田 では、次回の健診も楽しみにしておきます(笑)
受診先医療機関で健診データを手軽に活用
藤岡 今年から当センターが提供しているPHR(※)・医療情報共有アプリ「NOBORI」を導入いただきました。皆様から反響はありましたでしょうか?
松本 あります、あります! やはり、紙媒体での健康診断結果は、引き出しに入れたままや、自宅に置いたままになりがちです。よほどの異常がないと数値まで覚えていないので、他院を受診の際、定期健診の結果について質問を受けても答えられないことが多いかと思います。でもアプリがあればスマートフォンでいつでもデータを見られるので便利だという声がありました。
藤岡 社員の皆さんにはどのように周知されたのでしょう。
松本 アプリの機能を伺った際、「これは凄く便利だ」と感じ、社内にアナウンスしました。そうしたところ、「アプリを使い慣れていない」「紙だと安心感がある」といった否定の声も出たのです。
藤岡 従来の紙媒体のものの方が見慣れているでしょうし、手元に現物が残る安心感があるのでしょうね。
松本 そうです。そこでアプリではPDFで健診結果を保存し、今まで通り印刷もできることを伝えると「印刷も出来るなら絶対、アプリの方がいい」という声に反応が多くありました。
藤岡 社員の方が診療の際に、アプリをご活用いただいたと伺っています。
松本 そうなのです。他院の医師のパソコンの画面に武田病院健診センターで受けた定期健診の結果データやレントゲン画像が出せるので画期的だと感じました。本来なら、レントゲン画像を武田病院へ依頼しないといけないと思います
藤岡 仰る通りですね。そうした複雑な手続きが省かれ、QRコードを読み取れば他院のパソコンのブラウザ上でデータが見られるという優れものです。
松本 本当にこれは凄い!と感じて自作の資料を作成して社内にアナウンスしました。
藤岡 それはありがたい反面、本来は我々がご用意しておくべき資料なのだろうと申し訳なく感じます。結果、タキイ種苗様では、全体の3割を超える150名以上の方にアプリをご利用いただくようになりましたね。
松本 次回はもっと増えると思います。
※PHR:IT等を活用し、自身のヘルスケアデータを活用し健康増進につなげるもの
便利なITツールと専門職による血の通ったサポートを提供
松本 アプリの機能も素晴らしいのですが、私は健診結果について「武田病院グループ総合窓口」でサポートしていただける電話相談サービスが大変ありがたく、助かるということをお伝えしたいです。
藤岡 要精密検査でない場合、「気を付けながら」もそのままにして良いのかどうか不安になりますよね。
松本 そうなのです。私自身もよく活用させてもらっています。「経過観察」という結果が気になり電話相談したところ、「この数値が高い場合は〇〇という病気の可能性があります。でも、こちらの数値は正常なので、〇〇の可能性は低いから今年は経過観察で大丈夫ですよ」と丁寧に教えていただきました。同じ「経過観察」でも安心感が全く違いました。
藤岡 専門の担当者が、その場で健診データを見ながら、総合的にご説明するようにしています。
松本 健診結果を受け取った社員から「これって検査を受けに行った方がいいの?」など、様々なことを尋ねられるのですが、健診担当の私には医療の知識がある訳ではありませんので答えられません。そこで「総合窓口に電話すると、医療の専門家に詳しく教えてもらえます」と言えるのはとてもありがたいです。
藤岡 やはり身体のことですので、個々様々な違いがあります。限られた紙面での結果説明だけでなく、補足として総合窓口もご利用いただければと思います。
中田 こうした「安心して働ける環境づくり」も会社の重要な使命と考えています。
ご家族の健康も守る企業風土
藤岡 会社様が考える環境づくりとのことで、社員様の「ご家族」についてはどのようにお考えでしょう。
中田 もちろん家族も社員同様、大切と考えています。社長の川瀬自身、社員の見本となるよう率先して健康診断・予防接種等は夫人と一緒に受診しています。
松本 私も長年健診を受けていなかった夫を誘って一緒に健診を受けました。オプション項目も含め、しっかりと検査したところ、血液検査で要精密検査となりました。
藤岡 やはり定期的な健診が必須ですね。
松本 その通りだと感じました。再検査の結果は重篤な状況でなかったので、胸を撫でおろしたのですが、食生活の改善が必須だと指摘され武田病院グループの康生会クリニックで管理栄養士さんによる食事指導を受けました。夫は遅い時間まで仕事をすることが多いので、どうしても食事が深夜になるなど改善すべき点が多々ありました。
中田 それはとても心配になりますね。
松本 それで、食事時間の変更が難しいのなら、出来る範囲で食事内容を変更するようアドバイスをいただいたのです。食品サンプルを使っての管理栄養士さんの説明は私にも分かりやすかったです。
藤岡 実体験としてのお話が伺えてとても嬉しいです。
松本 そうした「少しの努力で出来る」アドバイスに感動しました。妹にも武田病院健診センターさんの食事指導を紹介したぐらいです(笑)現在、夫も妹も血液検査は良好になりました。
藤岡 ありがとうございます。スタッフ全員の励みになると思います。
松本 今年から社内の巡回健診以外に健診センターでの健診を選べるようになったことにより、社員から「病院に健診を受けに行くのであれば、家族もついでに一緒に受けてみようかな」という声を聞きました。家族も誘ってみようかなと思ってもらえること、また病気になる前に健康維持の大切さを知ってもらえるような情報発信もしていきたいと思っています。社員も家族も健康であることが、安心して働けることにつながると思っています。
藤岡 そういった取り組みのお手伝いができることはとても嬉しく思います。
社員の健康を土台に190周年、200周年に向かう
藤岡 これまで幅広くお話を伺い、特に印象的なのは、皆様方が「実現性」を重視しながら業務に取り組んでおられる姿です。タキイ種苗様が掲げるミッションには「人々の健康や生活の潤い、食の安全・安心と環境保全に貢献」との文言がありますが、世界の人々の健康や豊かな生活に貢献するためには、まず社員様のご健康を守ることが重要と感じます。
中田 今、言われている「健康経営」がそれに当たるでしょうか。当社では社員が安心して長く働いていただけるよう、2006年から団体長期障害所得補償保険(GLTD)に加入したり、職員のリラクゼーションとしてマッサージ室を用意したりしています。
松本 視覚障碍者の方にヘルスキーパーとして来ていただいていて人気を博しています。予約制でマッサージを受けられるようにしていて、1回25分間で社員負担は200円です。
藤岡 それは羨ましい限りです(笑) ほかにも社員様のサポートとして、当グループの康生会クリニックのスタッフが伺って、インフルエンザ予防接種も行っておられますね。
中田 はい。2025年には創業190周年、その先には200周年が控えており、会社の成長とともに、健康面で社員をどのように支えるかも大切な取り組み課題のひとつです。まずは、健診や「NOBORI」アプリがただの記録行為で終わるのではなく、それを活用できるよう、もう一歩踏み込んでいきたいと考えています。
藤岡 本日は幅広いお話を頂戴しました。ありがとうございます。
※文中敬称略
タキイ種苗株式会社
■社員数
794名(男性432名、女性362名) ※2023年4月1日現在
■事業内容
野菜・草花・牧草・芝生等のタネ(品種)を研究開発・生産・販売する総合種苗メーカー。「桃太郎トマト」の種苗でその名を広く知られる。